自分史は「生きた証し」

 自分史は個人の歴史のことです。

自分史というと人生の成功者である著名人や偉人の伝記や自叙伝、高齢者が人生の集大成として書きあげるものなど、固定的なイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、「自分」という言葉は年齢や性別、社会的地位などで限定すべきものではありません。

ですから、自分史はすべての人が平等に使える表現です

 

自分史という言葉は、1975年(昭和50年)7月に歴史学者の色川大吉が執筆された書籍『ある昭和史 自分史の試み』の中で正式に使われたとされています。色川氏は「その人なりの歴史、個人史は、当人にとってかけがえのない‟生きた証し”であり、無限の想い出を秘めた喜怒哀楽の足跡なのである。ーーこの足跡を軽んずる資格を持つ人間など、だれひとり存在しない」と記しました。そして、戦前戦後の日本と自分の歴史を振り返って、「庶民こそ歴史を語るべきである。庶民こそ自分史を遺すことが必要」と説かれています。

 

すべての人に世界にひとつだけの「自分史」があり、それは間違いなく当人にとってかけがえのない‟生きた証”。それを「語るべき」と色川氏が強調されたのは、語る本人にとっても、それを受け取る側にとっても意義のある、かけがえのないことだからなのです。 

私は、凡人(自分に‟凡人感”を抱いている人)こそ自分史を、人生に空虚感やあきらめを感じている人こそ「生きた証」である自分史を、という表現を使っています。人生に前向きになれない、課題を抱えて生きづらさを抱えている時にこそ自分史に取組んでみることを提案していきたいと思っています。